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この程、バイエル薬品がアダラート発売30周年を迎えることができたことは、開発に際し、その薬理作用の研究に携わった一人として、二つの点で同慶の至りである。
第一点は、アダラートの本体である完全合成品のニフェジピンが、30年経った現在も高血圧・狭心症治療薬の中で最も頻用されている薬剤の一つであることである。息の長い完全合成品の薬剤としては、アスピリンがあるが、アダラートは2006年で107年になるアスピリンの息の長さには及ばないものの、30年という息の長さは驚嘆に値する。というのは、20世紀のワンダードラッグとしてステロイドと抗生物質が挙げられるが、第一世代のものはほとんど使用されていないし、抗生物質に至っては耐性菌の出現ですべて短命である。 |
アスピリンもアダラートもバイエル社の所産であることを思うと、バイエル社には惜しみない賛辞を贈りたい。第二点はアダラートの薬効薬理の研究と高血圧・狭心症治療薬としての開発において、わが国の循環薬理学者と循環器病学者がアダラートの本国のドイツをも凌駕していたことである。良い意味での日独同盟であった。
1969年の春の彼岸の中日、イヌでの実験であるが、ニフェジピンが当時の冠血管拡張薬の約100倍の効力を示し、全身血圧が低下しても冠血流量を増加させたとき、これを目の当たりにされた、当時東北大学薬理学教授の故橋本虎六先生の興奮は異常としかいいようがなかった。興奮覚めやらぬ橋本教授は、早速この驚異的な冠拡張薬の臨床研究を当時日本医科大学教授の故木村栄一先生に持ちかけられた。そして判明したことは、異型狭心症に対しての前代未聞の効果であった。当時金沢大学内科教授の故村上元孝先生は、つとにアダラートの降圧効果に着目されていたが、降圧は冠血流増にマイナスとの循環器学の常識に阻まれ、高血圧治療薬として認められるまでには時間を要した。
いずれにしても、アダラートの今日における主要な適応はこの時期に方向づけられたといえる。
その後、このジヒドロピリジン誘導体の作用機序としてL型Caチャネル遮断が解明され、多くの後続品が開発された。
しかし、私は長男優秀説を信じて止まない。 |
東北大学名誉教授
学位授与機構名誉教授
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